流行の兆し「デング熱」
世界的に流行の兆しを見せている「デング熱」についてのお話をしています。

流行の兆し「デング熱」

近年、地球温暖化が問題視されていますがそれに伴って 私たちを取り巻く感染症にも大きな変化がみられています。そのなかでも地球温暖化の影響として見過ごせないのが、蚊が媒介する衰弱性疾患や致死性の疾患の蔓延です。

 

血を吸う蚊
デング熱、ジカ熱、ウエストナイル熱、チクングニア熱といった蚊媒介感染症は、最近まで蚊の生息数が多い温暖な地域で主に発生していました。しかし気温と海水面の上昇により蚊の生息に適した場所が増え、これらの感染症は地理的な拡大をみせています。

拡大する「デング熱」の発生

もともとデング熱の発生は、中南米や東南アジアの一部に限られていました。しかし50年前にはわずか9カ国でしか確認されていなかったものが、現在では125カ国以上で流行しています。

 

米国国立衛生研究所による2020年の調査は、地球の温度が1℃上がるごとに、デング熱の患者が35%増加すると結論付
けています。デング熱はすでにこの50年間で30倍にも増えています。そして今後も地球温暖化の影響によりデング熱患者は増え
ていくといわれています。

 

この流れは世界だけではなく、日本においても懸念されています。コロナ禍後の人流再開で、日本から流行地域への渡航者数が再増加しました。それに加え、流行地域からの訪日外国人も増加しています。今後、日本へのデング熱輸入例の増加は避けられない状況といえるでしょう。

 

日本にもデング熱を媒介するヤブ蚊の一種であるヒトスジシマカが、本州以南に生息しています。このため国内のヤブ蚊が輸入患者を吸血すると体内でウイルスが増え、その蚊が次の人を吸血したときにウイルスを注入し感染させる可能性があるのです。

「デング熱」の症状

寝込む男性蚊に刺されてから3~7日程度で高熱のほか、発疹、頭痛、骨関節痛、嘔気・嘔吐などの症状が見られれば、デング熱の可能性があります。

 

また、デング熱患者の一部はまれに重症化してデング出血熱やデングショック症候群を発症することがあり、早期に適切な治療が行われなければ死に至ることがあります。そのため早めに医療機関を受診することが大切です。

「デング熱」の対策

・デング熱の発生地域へ渡航する場合は長袖、長ズボンを着用したり、蚊の忌避剤(虫よけスプレー等)を使用したりして、蚊に刺されないように注意してください。
・蚊の発生源を減らすために定期的に幼虫が発生しそうな周辺の水たまりの除去、排水溝などの清掃をしましょう。

 

・学校、寺社、公園、駅などの施設周辺では下草を刈るなど、成虫が潜む場所をなくしましょう。
デング熱から身を守るポイント
デング熱は蚊を媒介して拡がる感染症のため根絶や予防が難しいといわれています。今までのようなマスク、手洗い、うがいといった感染対策はほとんど効果がありません。「いかに蚊に刺されないか」が重要な対策ポイントです。

 

私たちを取り巻く環境が変わっていくなかで、今までは日本で耳にすることのなかった感染症・異常気象が増えています。どのように自分の身を守るべきなのか 一人一人が判断し行動することを心がけましょう。