日本では、2025年には認知症の人は約700万人になると推定されています。これは高齢者のおよそ5人に1人の割合です。
年をとれば誰でも物忘れが多くなりますが、それが「単なる物忘れ」なのか「認知症による物忘れ」なのか その違いを知っておくことは大切です。
例えば夕食で何を食べたかを忘れるのではなく、夕食を食べたかどうかを忘れてしまうような場合は認知症による物忘れの可能性が高いといえます。
このような記憶力の低下だけでなく「よく知っている道で迷う」「今日が何日かわからなくなる」というように場所や時間の感覚(見当識)が乏しくなるのは、認知症のなかでも患者数の多い「アルツハイマー型認知症」の典型的な初期症状です。
■認知症と診断されたら
①どのタイプの認知症なのか
②程度はどのくらいなのか
③生活上の注意点
④今後の予測など
について医師から医学的な説明を受けることになります。最初はショックで医師の話が耳に入らないかもしれませんが、多くの人は時間が経つにつれて少しずつ冷静になり、認知症について理解ができるようになっていきます。
認知症と診断されて特にショックを受けやすいのが、65歳未満で発症する「若年性認知症」の場合です。国内では4万人近くの患者さんがいるとされています。
仕事・子育て・住宅ローン・親の介護など、いろいろな責任を負うことが多い年代のためパニック状態になるケースもあります。
いろいろな心配事が押し寄せてきて パニックになってしまわないだろうか。しかし症状の進行を遅らせるためにも 少しずつ受け止めていくことが大切だ
診断された現実を受け止めて、再び前を向くというのは簡単なことではありません。しかし、どうにか現実を受け止めて再び立ち上がることはとても重要です。なぜなら前向きに脳を活性化させることは認知症の進行の緩和にもつながるからです。
■認知症を受け止める
認知症と聞くと多くの人は「すぐに色々なことが分からなくなってしまう」と思いがちですが、そうではありません。認知症は年単位でゆっくり進行するものです。だからこそ
「今できることはなにか」
「自分にとって大切なものはなにか」
周囲の人の協力を得ながら、これからの生活について考えてみることが大切になります。自分にとって大切なことを続けることで気持ちが前向きになれば、認知症を受け止めやすくなります。
また、意外なことに認知症があることは決してマイナスの面だけではありません。ほかの病気による痛みや苦痛が軽減されたり、おおらかな性格に変わる人もいます。
■認知症の進行を遅らせる
認知症になると、それまで出来ていたことが苦手になったり 周りとのコミュニケーションが以前のようにスムーズには進まなくなったりします。
時間や場所の感覚も乏しくなるため、不安が増えて自然と家から出ることが少なくなりがちです。しかし認知症の進行を遅らせるにはなるべく身体活動(家事や運動)を増やしたり、人とのコミュニケーションをとって脳に刺激を与えることが重要です。
家にこもってばかりいると脳への刺激が少なく認知症が進行しやすくなります。そうならないためにもデイサービスや認知症カフェなどを積極的に利用して外に出て活動できる「居心地のいい居場所」を見つけることをおすすめします。
外に出ることが不安になって家にこもりがちになると、脳への刺激が減って認知症が進行しやすくなるなんて。人との関わりや 外での活動は積極的に取り入れたほうがいいのね
■デイサービスや認知症カフェ
デイサービスは介護保険サービスの1つです。自宅から施設に通って介護を受け、利用者が自宅で自立した生活を送れるように食事・入浴・トイレなどの手助けを受け、自宅生活を継続する方法を学びます。
それぞれに合うデイサービス施設を見つけるには、日常生活で困っていることや本人の好きなことをケアマネージャーにしっかり伝えることが大切です。いくつかの施設を見学したうえで決めましょう。
認知症カフェは、地域の公民館、介護施設、医療機関、民家、飲食店などを利用して開催されていて1回2時間ほどで月に1~2回開かれるのが一般的です。運営しているのは市区町村、介護サービス事業者、医療機関、地域ボランティアなどで、費用は無料~数百円が一般的です。
デイサービスでは提供されるプログラムに沿って過ごすのに対して、認知症カフェは自由に過ごせるのが特徴です。ご希望の方はインターネットで検索してみたり、地域包括支援センターに問い合わせてみてくださいね。